ABS

ABS樹脂とは?

ABS樹脂とはアクリロニトリル、ブタジエン、スチレンのそれぞれの頭文字をとって命名させており、これらを重合させたプラスチックのことです。
耐薬品性もあることはあるのですが、樹脂の中では他にもABS以上の特性を持つものはあります。
ABSはアルコールに長時間漬けておくと膨張し、鉱物油や強酸、強アルカリ等でも劣化や浸食します。
しかし、外観は美しく、光沢にも優れており、印刷特性もよい材料です。
外観は完全なクリアではなく、薄く黄色見(肌色、アイボリー)がかっています。
化学薬品などによる劣化だけでなく、直射日光にもあまり耐性がなく長時間あてると劣化していきます。
しかし、これはどのような色で着色したのかも影響するとされています。

ABS樹脂を使う場面

ABS樹脂の最大の特徴は加工性の良さです。
プラスチック形成の中で最も多く使用される射出成型や押出形成、ブロー形成、真空形成など、金型を使った大量生産に適した素材として使用されています。
切削や塗装、メッキなどにも順応し適応能力が高いことも加工を行う時に重宝される要因となっています。
また、スーツケースやキャリーケースもABS樹脂製の軽いものが販売されています。
ABS樹脂を改良したものに、難燃ABS樹脂であるFR-ABSやガラス繊維を入れた強化ABS樹脂もあります。

ABS樹脂を使って作られるもの

ABS樹脂は非常に幅広く、自動車や家電製品、住宅建材、家庭用品など様々な分野で活用されています。
身近なもので言えば、ノートパソコンやプリンター、洗濯機や冷蔵庫、テレビ、カーオーディオ、カーナビゲーションなどがあります。
住宅建材では、システムキッチンの天板、洗面化粧台の天板、取っ手などがあります。
つまり、極端な言い方をすれば、現在の生活はABS樹脂で構成されているといっても良いほどです。
工業製品の多くは射出成型によって成型されたABSが用いられ、用途に応じてその他の加工が施されて、完成された製品になります。

3Dプリンタの材料としてのABS

ABSはデスクトップ用の小型3Dプリンタの印刷材料としても多く用いられています。
多くのデスクトップ型3Dプリンタが採用している熱溶解方式3Dプリントはフィラメント(糸)状にしてロールに巻きつけられた材料をヒーター内に引き込み、徐々に溶かして、ノズルの先端から押し出して成型を行います。詰まったり固まったりする心配が少なく、滑らかに押し出されるABSはこの造形方式に適しています。

適切な条件で造形されたABSは強度が高く、弾力もあり、100度でも溶けないABSは様々な環境で使用することができます。落としたり、自動車の中のように高温になる可能性がある環境でも使用できます。

難点は、精度の高い造形が難しいことです。高温から冷えた時の収縮率が高いABSは、データ上で指定した寸法より小さくなる可能性があります。また、造形中に先に造形された層と後から造形された層の温度差が生じることによって、層間の接着がなされずにクラック(ひび割れ)になってしまったり、造形物が乗る台から剥がれてしまうなどの問題が起こります。特に、造形場所が解放された形式の3Dプリンタでは、周囲の温度調整ができないため、このような造形不良が生じやすくなっています。

ABSの造形不良に対処するため、デスクトップ型の3Dプリンタはエンクロージャーで造形場所を密閉し、温度管理をする機種が増えました。また、3Dプリンタメーカーによっては、ABSに他の素材を混ぜたり、独自の温度管理をすることで、造形不良を解決しようとするアプローチをとっています。


 

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